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Sep 10, 2011

高岡望「日本はスウェーデンになるべきか」

ISBN978-4-569-79247-7.gif

アメリカ型の市場機能重視の「小さな政府」。
そして、本書のような財政機能を重視した「大きな政府」。
簡単に言うと、広義の資本主義と社会主義。
政権をとった民主党が真似ようと言っているのが
スウェーデン式の年金制度。
著者は、スウェーデン公使を努められている方。
本の前後で「日本はスウェーデンになるべきか」と問うていますが、
両手を上げて賞賛しておらず、両者の共通点と違いを明確にしています。

第1章 スウェーデンという国
長い長い冬。日照時間もわずか。でも豊かな国。なぜか。
中立を貫き、先の二度の大戦を逃れる。
豊かな自然。電力の半分は水力。でも農耕はできない。
科学技術大国。ノーベル賞。多くの発明。最近ではスカイプ。

第2章 スウェーデンの本質
自立した強い個人。幼児も老人も逞しい。IKEAのようにDo it yourself。
規則に基づく組織力。日本人を超えた細かいルール。慣れ合いではない。
透明性。個人番号認証制度。
連帯。高い租税負担の受け入れ。労働組合。国際協力。移民の受け入れ。

第3章 世界一男女平等な国
国会議員の半分近くが女性。就業者比率も男女半々。専業主婦率2%!
育児に対する手厚い保護。逞しき女性や子供。
逆に高い租税を支払うには共働き?

第4章 手厚い社会保障の裏に
子供との同居率4%。逞しき老人と介護制度。
一定量を超えると、働けば働いただけもらえる年金制度。
所得の16%という高い保険料にもかかわらず、
透明性を持って、労働意欲を下げない。
細部にわたって検討され、実施までに15年を要す。

第5章 競争力強化のために
デンマーク人がデザインして、スウェーデン人が作って、
ノルウェー人が運ぶ。
法人所得課税26.3%と低く、EU統合でさらに値下げ競争。
相続税、贈与税、さらに資産税まで廃止。
業績が良ければ雇用しやすく、悪ければ解雇しやすいシステム。
失業保険の裏に高い若年層の失業率。後から雇われたものから解雇。
日本は団結してひとつの船に乗り続け、
スウェーデンは、傾いたら政府の救助ボートから次の船へ。

第6章 中立、EU、価値の外交

見習うべきところは見習うべきですが、
日本人にはスウェーデンの様な逞しさと覚悟がないのでは。
強いリーダーよりも強い組織が必要と感じました。
小さな政府化(地方分権)した大きな政府が良いのでは。

最後に、本書の冒頭でも紹介されている
スウェーデン在住日本人の投書を引用。

2010年平成22年7月21日水曜日 朝日新聞 声
スウェーデンは理想郷ではない
小学校教員 フス恵美子
スウェーデン 39歳
毎年一時帰国するたび、日本で、福祉大国の理想郷としてスウェーデンが語られることを苦々しく思っています。税金が高く、「高負担」は確かですが、「高福祉」には疑問点も多く、日本よりはるかに優れた社会という見方には賛同できません。
例えば、就学前の「幼児教育」は存在しません。大多数の公共保育園は、預かった子供の安全を保証するのが仕事で、資格を持たない人が数多く働いています。小学校入学前に6歳児教育が1年間ありますが、イスに座る、鉛筆を持つ、アルファベットを書く、というレベルです。
「将来への安心から貯蓄が不要」というのも、誤った解釈です。国民の多くは不安を抱えています。。年金は物価や税金の高さからすれば、十分な額とは言えず、銀行は「将来、年金では暮らせません。若いうちに蓄えましょう」と積立預金を呼びかけています。しかし、月5万円のパート収入ですら3分の1を税金で持っていかれ、最高税率25%の消費税。住居・光熱・医療費、保育料も高く、普通の家庭ではお金が残りません。国民の多くは「可処分所得が少ないから貯金できない」のが現実です。
若者の犯罪増加、就職難、麻薬や性病の蔓延。さらに、フルタイム労働で疲れ切った母親、冷凍物ばかりの夕食。これらが理想郷でしょうか。

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Comments

くわしく書いて下さってありがとう。
やすなりくんの文章読んだだけでだいたいの内容が理解できたので、
あらためて読む必要がなくて助かる♪
全てサルまねするのはどだい無理な話だろうし、
それがいいとも思わないけれど、
まねできるところは工夫してとりいれていけたらいいよね。
それが難しいんだろうけれど。

Posted by: ともり | Sep 11, 2011 at 03:25 PM

ともりさん>
小説以外でもご興味があって素晴らしい。
ともりさんなら逞しいので、どんな社会でも対応できるのでは。

Posted by: やすなり | Sep 11, 2011 at 03:51 PM

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