伊坂幸太郎「モダンタイムス」
表紙を書いているのは野又穣。
この方の空想建築、いいですね。
魔王の話から50年後。
「人は分からないことがあったらまず検索する」、
「アリは賢くないが、コロニーは賢い」というのが
今回のお話を全てを表しているように思います。
同時期に書かれたゴールデンスランバーは、
見えない大きな敵から逃げまくりますが、
このモダンタイムスでは登場人物が戦うことを選択します。
特に後半の下巻になると、
魔王の兄弟のその後も明らかになるし、
痛みを伴いながらも、どんどん真実に近づくし、
一気読みしてしまいました。
恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海が請け負った仕事は、 ある出会い系サイトの仕様変更だった。 けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。 そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。 彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。
播磨崎中学校、安藤商会、個別カウンセリング
で検索すると、登場人物は拷問を受けたり犯人にされたり
とんでもない目にあってしまします。
実際に検索してみると・・・
こんなサイトにたどり着きます。
出会いすぎちゃうくらいに出会っちゃうサイト
伊坂幸太郎のインタビューや「井坂好太郎」ファンサイトもあります。
面白いですよ。
あとがきや上記のインタビューを見ると、
文庫化に当たってずいぶん手が加えられたようです。
作中作の「苺畑さようなら」は、連載、単行本、文庫で書き換えられ、
結末の真実もさらに付け加えられたとのこと。
長文にも関わらず、
伏線の深みや真相に向かっての整合性が増しています。
国家とは、生き長らえることを使命としたシステム、
その中で個々の人生をどうするか、
それが本作の主題なのだと思います。